ふとこん編集部 2026年10月8日

フリースクールインタビューVol.2
勉強も登校も求めない。
子どもの言葉から始める。
今回は北海道富良野市の「フラヌイスコーレ」にお話を伺いました。2023年に労働者協同組合として立ち上がった団体で、フリースクールのほかに飲食店の営業や農園もやっています。長く教員をしていた中島さんが、フリースクールの部門を担当しています。
「勉強も、学校に戻ることも求めない」と決めているフリースクールです。子どもたちの言葉から活動を組み立てる毎日について、聞かせていただきました。

中島彰弘さん
労働者協同組合フラヌイスコーレ 理事
長く教員として子どもたちと関わり、60歳で退職。2023年に地域の仲間と労働者協同組合フラヌイスコーレを立ち上げ、理事としてフリースクールの部門を担当している。
保護者のひと言から始まった
まずは自己紹介をお願いします。
労働者協同組合フラヌイスコーレの中島彰弘です。不登校のこどもたちとその保護者の支援を目的として現在9名の組合員を中心に活動しています。
私はフリースクールの部門を任されているので、今日は私からご紹介させていただきます。
立ち上げたきっかけを教えてください。
私はずっと長いこと教員をしていて、60歳で退職しました。その退職間際に、たまたま保護者の集まりで、ある保護者の方がご自分の娘さんが不登校だったという話をしてくださったんです。今は通信制高校に通っているけれど、不登校だった中学2年、3年のころは、母親として毎日がつらかったと。子どもが今日一日を無事に過ごしてくれるか、それだけで精一杯の毎日だったそうです。
不安で打ちひしがれた気持ちの中で、「自分の育て方が本当に間違っていたんじゃないか」と、私に打ち明けてくださったんですね。その言葉が今も私の中に残っています。
その言葉をきっかけに、不安を抱えて困っている子どもたちや保護者を、なんとか支援できないか。同じ課題意識をもった地域の仲間と一緒に、この労働者協同組合フラヌイスコーレを立ち上げました。

名前は富良野の語源となったアイヌ語から
フラヌイスコーレという名前には、どんな意味があるんですか。
フラヌイというのは、富良野の名前のもとになったアイヌ語です。「においのあるところ」、という意味だそうです。現在も火山があって、そのにおいが富良野盆地まで立ち込めていた、というのが通説らしいです。
スコーレはギリシャ語で、スクールの語源ですね。余暇とか、すき間の時間といった意味です。
フリースクールを支えるもう一つの仕事
フラヌイスコーレには、フリースクール以外の部門もあるんですね。
はい、そうなんです。定款では、子どもたちや保護者の支援はもちろん、それを支えるための仕事もできるようにしてあります。たとえば子ども食堂は、食を通して子どもたちの生活を支えるものですよね。私たちも同じように、子どもや保護者支援を目的とした飲食業なども定款に謳っています。
組織を立ち上げるときに、麓郷で農園を経営されている方々が趣旨に賛同してくださって、ぜひ手助けしたいと声をかけてくださったんです。休日は親子連れや観光客で賑わうアンパンマンショップに隣接する富良野ジャム園内のスペースを提供してくださいました。
そこをお借りして、フリースクール運営の一助になればと、ここ3年「フラヌイスコーレ森のキッチン」として、ランチや軽食を提供してきました。



午前は好きなこと 午後はみんなで決めたこと
どんな子が来ていますか。
今募集しているのは主に小学生と中学生ですが、高校生もいます。中学校で不登校になってすぐには進学できず、勉強しながら高校進学をめざしている子もいます。主にそういった子どもたちと保護者ですね。
実際にはどんな活動をしていますか。
朝に簡単なミーティングをして、今日どんなことをするかを相談します。午前中は10時から12時までで、子どもたちの好きな活動をしています。お絵かきをしたい子もいれば、朝早く起きて疲れたから少し横になっている子もいます。ジグソーパズルをしたり、何人かで集まって工作をしたり絵をかいたり。本人が勉強したいと言えば、狭いですが勉強するスペースも作っています。

お昼は事務所で作ったり、お弁当を持ってきたり、近くのコンビニに買いに行ったりします。
午後は1時半から3時まで、子どもたちと一緒に計画した活動をします。月末に、次の月に何をやりたいか計画を立てるんです。ここは田舎町なので、大きなショッピングモールに遊びに行きたいと言えば午後から行こうねとか、ラーメンを食べたいと言えば食べに行ったり。支援してくださる方が、トマトやイチゴが食べごろだから取りに来ないかと声をかけてくれて、子どもたちが乗っかっていくこともあります。
富良野の自然をそのまま活動に生かしているんですね。
そうですね。実は私の実家はもともと農家で、そこにある畑で「スコーレ農園」をやっています。夏場に子どもたちと栽培して収穫して、10月に収穫祭をするんです。とれた作物を地域の方々に販売したり、カフェを開いてみんなに食べてもらったりしています。

1日の時間や、開いている曜日を教えてください。
1日は10時から15時までです。今のところ開いているのは火曜日から木曜日です。月曜と金曜は、今年は対象の子がいないのですが、これまでアウトリーチで訪問支援にうかがってきました。
公共交通機関も少なく遠くから通ってきている子どもたちや保護者の負担を減らすため、原則として自宅からスコーレまでの送迎をしています。
保護者の方への支援もしているんですか。
はい。定期的に保護者会や懇親会を開いているほか、子育てや教育について保護者の方々と語り合う会も開いています。子どもが学校に行けなくなると、親御さんはどうしてもひとりで抱え込んでしまいがちなんです。同じ思いをもつ親同士がつながって、気持ちを分かち合える場にしたいと思っています。これも、私たちが大切にしている保護者支援のとりくみの一つです。
子どもの言葉から出てきたことを実現させる
活動の内容を決めるときに、大事にしていることはありますか。
子どもたちがゆっくり、自分のやりたいことを考える時間ですね。月末に来月何をするかを決めるミーティングがあるんですが、その時に決まらなくても、じゃあ考えておいてねと言って、次の日にもう一回話し合います。
そうすると、お家の人に聞いてきたり、インターネットで調べてきたり。おばあちゃんがここの温泉がすごくいいと言っていたから行きたいな、とか。そんな家族の話を活動のもとにすることもあります。子どもたちの言葉で出てきたことを、そのまま実現させてあげる。それを大事にしています。

教員の仕事とフリースクール運営のギャップ
教員だったころと比べて、違いをどう感じていますか。
ギャップだらけなんですが、私はいわゆる「いい先生」ではなかったので。上から決められたことをこなす教育ではなくて、子どもたちの声を拾い集めて教育活動を行ってきました。今はそれ以上にできるワクワク感があります。
ただ、財政的に潤沢なわけではないので、活動のフィールドが広がると難しいところもあります。それでもできる限り、子どもたちの願いを叶えるような活動をするようにしています。
教員のころより、縛りがないということですね。
そうですね、自由度があります。ただ、それだけ私たちにも責任はあるし、子どもたちにも責任が返ってくるんですね。言いっぱなしではなくて、自分たちの言ったことを実現するにはどうするか。実現できたという実感を持って、じゃあ次は何をやるのか。自分たちで考えざるを得ないところに行くので、その循環がうまくできていけばいいなと思っています。
自由度と、その裏返しの責任が、次の計画に生かされているんじゃないか。漠然とですが、そう考えています。
フリースクールで変わっていった子の話
ここで過ごすうちに、変わっていった子のエピソードはありますか。
入会する際は事前面談をするのですが、ある保護者の方は、どうしていいのか分からない、わらにもすがるような、とても緊張した面持ちで面談に来られました。うちの子は学校の校舎を見るだけで吐き気がするんです、というのが一番の相談でした。それが繰り返されて、物も食べられない日が2週間続いている。この子はどうなってしまうんだろうと。
その後すぐに本人とも面談をしたんですが、体も心もすっかり疲れていて、やせ細って弱々しく見えました。
ところが、ここでいろんな活動を繰り返していくうちに、だんだん変わっていったんです。特に何かをしたわけではありません。ここには立ち上げた大人たちが入れ替わり立ち替わり、いろんな年齢やいろんな職業の人が出入りしています。その中で声をかけられて、会話をして、対話をして、活動していくうちに、その子がだんだん顔を上げるようになっていきました。
私たちがみんなで約束しているのは、勉強を強要しない、学校に戻ることを求める取り組みはしない、ということです。子どもたちがそれを望んだときには、全面的に受け止めて活動しようね、と。
半年以上たったある日、その子が勉強してみたいなと言い出したんです。どうしてと聞いたら、高校受験に向けて勉強したいんだと。じゃあやってみるかと、そこから受験勉強を始めました。みるみるやる気を出して、午前中は自分の活動の時間なので受験勉強に集中して、午後はみんなとの活動に参加して。
その中で、学校に行ってみたいとも言い出したんです。行ったらどうなるか試してみたいと。校舎を見るだけで気持ちが悪くなっていた子です。無理しないほうがいいと言ったんですが、じゃあ近くまで一緒に行ってみようかと、私の車で学校を見に行きました。
そうしたら、それほど気持ちの揺れはなかったようで、調子も悪くないし、お腹も胸も痛くないと言うんですね。もうちょっと入ってみようかと、歩いて校門から玄関まで行ってみても、なんともないと。その日は校舎には入らないと担任の先生に伝えてあったので、そのまま帰ってきました。
それから1か月ぐらいたって、学校にちょっと行ってみようかなと言い出しました。行ってみると、やっぱり玄関から教室までは行けなくて帰ってくる。それが何週間か続きました。そしてある日、ふっと教室まで入れて、午前中の2時間ぐらい授業を受けて帰ってきたんです。それが3か月ぐらい続いたでしょうか。だんだん慣れていって行事にも参加するようになり、中学校の学校祭でもほかの友達と一緒に活動できるようになりました。
そして中学3年の春に卒業して、高校に進学しました。一言では言えない、言っちゃいけないと思うんですけれど、とても印象に残っている出来事です。
今は離れた高校に下宿して通っています。地元に帰ってきたときには寄ってくれて、高校がすごく楽しいと話してくれます。
小中学生と高校生や若者が出会う場所に
これからの目標を教えてください。
小さな町なので、義務教育の子どもたちだけでなく、通信制高校に通っているけれどなかなか行けない、という生徒さんの相談も受けているんです。その支援をどうしていくか、今組み立てているところです。
一つは、アルバイトなどを通して社会体験につなげていくこと。もう一つは、スコーレで小中学生がやっている自然体験などの行事に参加してもらうことです。リーダーの役割を担ってもらうというより、自然とお兄ちゃんお姉ちゃんとして入っていく。小中学生と高校生や若者たちの接点を、このフラヌイスコーレで作りたいと思っています。

保護者が元気になれば子どもも元気になる
最後に、このページを見ている保護者の方へメッセージをお願いします。
これはもう確信だと思うんですが、私たちは、保護者の不安や焦りが和らぐことが、まず何よりも大切だと考えています。子どもは、親の不安をとても敏感に感じ取るからです。
「学校に行かない子」とその保護者に寄り添い、子どもたちが学び育つ場をともに支えながら、私たちは子育てへの罪悪感や不安を受け止めてきました。その中で、親御さんは少しずつ、わが子との関係を取り戻していきます。そして親御さんが元気を取り戻すと、たとえ学校に通えなくとも、子どもはその子らしさを発揮しながら自立への道を歩み始める——そんな姿を、私たちは何度も見てきました。
これまで多くのご家庭のお話をうかがってきましたが、「振り返ってみれば、あの時間があってよかった」と語ってくださる保護者は少なくありません。身を引き裂かれるような不安や苦しみはあったけれど、あの時間があったからこそ、この子らしさに気づき、親子の関係を見つめ直すことができた。今はその喜びのほうが大きい、と。
わが子を見るまなざしが変わり、親自身が喜びを見つけていく。私たちは、そんな親子の物語に、ほんの少しでもお手伝いができればと願っています。

基本情報
| 団体名 | フラヌイスコーレ |
|---|---|
| 種別 | フリースクール |
| 所在地 | 北海道富良野市 |
| 参加のかたち | 通所型 |
| 対象 | 小学生・中学生(高校生も在籍) |
| 費用 | 入会金:10,000円 月会費:25,000円 チケット制:20,000円(5枚綴り) |
| 開催 | 開室:火〜木 10:00〜15:00 午前:10:00〜12:00 好きな活動 午後:13:30〜15:00 みんなで決めた活動 |
| 設立 | 2023年 |
インタビューを読んで感じたこと、見学したことなど、一行でどうぞ。
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